山㟁厚夫の信念
1951年8月に福井県鯖江市で漆器屋の5代目長男として生まれ、中学生の頃より学業以外の時間は家業の漆器を手伝い、高校卒業後には後継者として漆塗りの修行を始めました。
修行当時から、漆器を「芸術品」というよりは「普段使いやすい物」という意識を持って漆器づくりを続け、家業に就いてからも漆や漆器についての勉強もしながら、普段使いやすい漆器を追及し、試行錯誤を繰り返していました。
その結果、出した答えが「刷毛目塗り」でした。
「刷毛目塗り」は今では普通に目にしますが、当時では「刷毛目を残す」という行為は「下手な仕事」という考えがあり、同業者にも一般の方々にも、なかなか受け入れられない物でした。
それでも「普段使いやすい、丈夫な漆器」=「刷毛目塗り」という信念を貫き、個展や展示会などの地道な努力を続けた結果、多くの方々に受け入れられ、ご好評を頂けるまでになりました。
今でも現状に満足する事なく、新たな山㟁厚夫の物づくりを続けています。
ジーンズ感覚の漆器を提案
若かりし頃に個展で光沢のある漆器を並べていた時、
「手入れは方法は?」「どんな布を使って?」など、
ほとんどのお客様が扱い方の質問をするばかりでした。
その時、「もっと、気楽に使える漆器を作りたい」と考えました。
お客様が漆器の扱いで1番心配な事は「傷」というご意見が多かったです。
綺麗な面を傷つけるのが怖いのなら、「洗いざらしのジーンズ」のような、
味のある作業性と耐久性に優れた、実用性の高い漆器を作ろうと考えました。
わざわざ新品のジーンズを洗濯して履いていたように、
「使い古したような漆器作り=ジーンズ感覚の漆器作り」が
私の物作りのコンセプトになりました。
作品の特徴
漆器に使用している素材は木製品のみで、作品の特徴としては、しなやかなS字の曲線で手に馴染みやすい柔らかいカーブが特徴的な形と武骨で荒々しい雰囲気を持つ形。
相対する雰囲気だけど、山㟁厚夫の内面が現れているのではないかと思います。
他にも「禅」の世界観が好きなので福井県の有名な永平寺で使用されている応量器などがあります。